俳句・短歌 短歌 自由律 2021.01.09 句集「曼珠沙華」より三句 句集 曼珠沙華 【第24回】 中津 篤明 「冬花火 亡び 行くもの 美しく」 儚く妖しくきらめく生と死、その刹那を自由律で詠う。 みずみずしさと退廃をあわせ持つ、自由律で生み出される188句。 86歳の著者が人生の集大成として編んだ渾身の俳句集を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 爭(あらそ)わず 夕焼けを ゆく 男の背 晩夏光 消えそう 父の 車椅子 鞄の中身 老い行く ばかり 冬の蝶
小説 『アイアムハウス』 【新連載】 由野 寿和 静岡県一家三人殺害事件発生。その家はまるで息をするかのように、いや怒っているかのように、大きく立ちはだかり悠然としていた 午前十一時。サイレンを鳴らさず、車両は静岡県藤市十燈荘(じゅっとうそう)に到着した。静岡中央市にある県警本部から十燈荘までは、藤湖をぐるっと大回りして藤市経由でトンネルを通り、小山を登ることになる。藤湖を見下ろす高級住宅街、十燈荘は、土曜の昼だが活気はない。既に外部への交通規制が敷かれているとはいえ、不気味に静まり返っている。ここで殺人事件があったことを、住民達が知っている気配はなかった。その家…
小説 『13.Feb チョコレーション』 【第3回】 齊藤 俊彦 宇宙船で二人だけの空間を避け、離れたがっているのだろうか? せわしなく地上へ戻りたがる彼の寝顔に感じる恐怖。 明日着陸ということで、朝早くから智子は孝太と協力して準備を急いだ。出荷用の区画の苗につながる給水ユニットを外さなければいけない。地上に着けば苺の摘み取りは地上にある農協のロボットがやってくれるが、摘み取りに邪魔なチューブは予め避けておかなければならない。しっかり働いて、ぐったりしたが、智子は夕食も奮発して料理した。池の鱒を二尾締めて、オーヴンでローストした。途中スモークもかけた。塩をした皮目もこ…