俳句・短歌 短歌 自由律 2021.03.06 句集「曼珠沙華」より三句 句集 曼珠沙華 【第31回】 中津 篤明 「冬花火 亡び 行くもの 美しく」 儚く妖しくきらめく生と死、その刹那を自由律で詠う。 みずみずしさと退廃をあわせ持つ、自由律で生み出される188句。 86歳の著者が人生の集大成として編んだ渾身の俳句集を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 別れゆく 斧に さみだれ 降り続く 稲妻や 遠離の 母の 地に生まれ ひび割れし 八月 母を 砂に積む
小説 『魂業石』 【新連載】 内海 七綺 沼のような目でこちらを覗くおじさん…通り過ぎようとしたら、ランドセルにかけた給食袋を引っ張られ、後ろから口を塞がれた。 茜色の気配が透明な青を少しずつ蝕む帰り道だった。背の高いブロック塀に囲まれた脇道の暗く湿った闇から、男がじっとこちらを覗いている。瞬き一つしない、暗い沼のような目。変なおじさんだ、と雪子は思った。姦(かしま)しく笑っている亜弓(あゆみ)たちは男にまったく気づいていない。そのまま一緒に通り過ぎようとしたら、ランドセルにかけた給食袋をつかんで引っ張られ、後ろから口を塞がれた。叫ぶ暇もなかった。亜弓た…
エッセイ 『保健師魂は眠らない[注目連載ピックアップ]』 【第13回】 真秀場 弥生 熱心な健康指導の直後に一人の女性が「健康に生きるために○○さまにみなさんでお祈りしましょう」と言い出し...... 【前回の記事を読む】体を壊し、退職してようやく気が付いた自分の立場。いざ退職すると...誰一人、私がいないために困っている人もいない。そもそも誰に言われなくても自分の不甲斐なさを自分自身が何より痛感している。けれど、「こうとしか生きようがなかった」というのが私の率直な思いなのだ。来し方を振り返れば振り返るほど、保健師は私にとっては天職だと思えてならない。公職から退いた今も、ふと気が付くと「保健師…