俳句・短歌 短歌 自由律 2021.03.20 句集「曼珠沙華」より三句 句集 曼珠沙華 【最終回】 中津 篤明 「冬花火 亡び 行くもの 美しく」 儚く妖しくきらめく生と死、その刹那を自由律で詠う。 みずみずしさと退廃をあわせ持つ、自由律で生み出される188句。 86歳の著者が人生の集大成として編んだ渾身の俳句集を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 母消えて 晩夏 火となり 海となる 悲母にして 石積む 石の 命かな 遍歴の 母の 悲しみ 桜魚
小説 『「本当の自分」殺人事件[注目連載ピックアップ]』 【第9回】 水木 三甫 硬直する体に構わず、若い桃のような頬に唇を当てる。首筋からさらに下へ、新鮮な匂い。しがみついていた力は抜け… 【前回の記事を読む】「好きな店でいいよ」と絶対に言わない。行く店は決めてくれるし、選ぶ店のセンスもいい。浮き彫りになる、夫の物足りなさ。高校を卒業すると、希代美はすぐに故郷を捨てた。都内の小さな問屋にどうにか事務職を得た。希代美は一生懸命働いた。会社とアパートを行き来するだけの生活。とにかくお金を貯めたかった。一人で生きていくためにはお金を貯めなければいけないという強迫観念があった。預金通帳の残…
小説 『ラーゴ 』 【第10回】 そのこ+W 複雑な事情から母国ロシアから逃げてきたボリスのことを私は能天気な正体不明の居候と決めつけることはしなくなった 【前回記事を読む】ここはイタリアだ。細かいことに文句をつけたり、自分と関わりのないことを詮索するのは馬鹿げている「大抵の四十五歳以上のロシア人にとってプーチンは救世主だ。僕の祖父母はもうすぐ八十に手の届く世代だが、彼らは人生で一度だって豊かさを味わったことがない。彼らが若かった一九六〇~八〇年代は共産主義の統制経済下でコルホーズの労働者だった。給料は出たが彼らのやり方は国民を辛うじて飢え死にさせ…