俳句・短歌 短歌 自由律 2020.08.01 句集「曼珠沙華」より三句 句集 曼珠沙華 【第1回】 中津 篤明 「冬花火 亡び 行くもの 美しく」 儚く妖しくきらめく生と死、その刹那を自由律で詠う。 みずみずしさと退廃をあわせ持つ、自由律で生み出される188句。 86歳の著者が人生の集大成として編んだ渾身の俳句集を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 次回の記事へ 最新 曼珠沙華 妖しき華燭 いま 始まる 雪の 夜更けの 拝火の弥撒に 泣き崩れ 人形の 鼓動 聴きいる 雪の夜
エッセイ 『ある朝、突然手足が動かなくなった ギランバレー症候群闘病記[注目連載ピックアップ]』 【最終回】 市川 友子 殺し屋の看護師たちが私にのしかかっていた。とうとう腰の骨を折られて殺されると覚悟した。 幻覚と現実の交差注射器で毒を打たれそうになり、私は打たれまいと速い呼吸を繰り返していた。「落ち着いて、深呼吸して、ゆっくりと」看護師さんの顔が目の前に見えた。点滴の針を取り替えているところだ。それなのに殺人鬼扱いされたのでは、看護師さんもたまったものではない。私はラジオ局に助けを求めた。病院に監禁されている私と家族を助け出してくれと訴えた。しばらくすると大勢の人が病院を取り囲み、何人かが病院に侵…
小説 『薄紅色のいのちを抱いて』 【第10回】 野元 正 夫が帰って来やすい依り代を盛大に作ろうと初盆は盆棚を大紅しだれ桜の樹の下に。灯明を点し迎え火の煙の中に… 【前回の記事を読む】95歳まで生きたばあちゃんの「元気の源」それは…エレベーターで20代の若い男と乗り合わせると「キスしようよ」って誘うこと「地球は青かった」と宇宙飛行士は言ったけれど、今は見せかけの青い景色のような気がする。地球に送られてくる写真データはすべて青いフイルターをかけることを義務づけられているのではないか。青い星は豊かな水の存在を表している。昔から人は枯渇する水を求めて争ってきた。…