俳句・短歌 短歌 自由律 2021.02.27 句集「曼珠沙華」より三句 句集 曼珠沙華 【第30回】 中津 篤明 「冬花火 亡び 行くもの 美しく」 儚く妖しくきらめく生と死、その刹那を自由律で詠う。 みずみずしさと退廃をあわせ持つ、自由律で生み出される188句。 86歳の著者が人生の集大成として編んだ渾身の俳句集を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 しろがねの 真冬 というか 列島列車 雪焼けの 円空仏や 父よ 母よ 弥陀の子と 思えど 哀し 雪の旅
小説 『アイアムハウス』 【新連載】 由野 寿和 静岡県一家三人殺害事件発生。その家はまるで息をするかのように、いや怒っているかのように、大きく立ちはだかり悠然としていた 午前十一時。サイレンを鳴らさず、車両は静岡県藤市十燈荘(じゅっとうそう)に到着した。静岡中央市にある県警本部から十燈荘までは、藤湖をぐるっと大回りして藤市経由でトンネルを通り、小山を登ることになる。藤湖を見下ろす高級住宅街、十燈荘は、土曜の昼だが活気はない。既に外部への交通規制が敷かれているとはいえ、不気味に静まり返っている。ここで殺人事件があったことを、住民達が知っている気配はなかった。その家…
小説 『薄紅色のいのちを抱いて』 【第15回】 野元 正 夫は生前、桜の樹の下で眠りたいと言っていた。先祖墓地にある山桜の挿し穂を大紅しだれ桜の側で育てる「桜墓」も良いのではと思う 【前回の記事を読む】「初期の大腸がんです。これなら内視鏡下手術で取れそうですから、だいじょうぶですよ」重大事をさも簡単そうに主治医に告げられ…今から桜の園の大地に立って将来を独りで見つめ直さなければならないのだった。女桜守として。そんな三月の半ば過ぎ、温かい日差しに誘われて夕子は、今出川通のバス停「北野天満宮前」でバスを降りて、天満宮を抜け、「平野神社」に行った。ここは、冬桜はもちろんのこと、三…