俳句・短歌 短歌 自由律 2021.01.16 句集「曼珠沙華」より三句 句集 曼珠沙華 【第25回】 中津 篤明 「冬花火 亡び 行くもの 美しく」 儚く妖しくきらめく生と死、その刹那を自由律で詠う。 みずみずしさと退廃をあわせ持つ、自由律で生み出される188句。 86歳の著者が人生の集大成として編んだ渾身の俳句集を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 色褪せし 花野に 病むは 老いたる羊 高原の 春 寒ければ 馬よ眠れ 月があやつる 暗き 影絵の 老いたる父よ
エッセイ 『逆境のトリセツ[パラリンピック特集]』 【新連載】 谷口 正典,益村 泉月珠 右足を切断するしか、命をつなぐ方法はない。「代われるものなら母さんの足をあげたい」息子は、右足の切断を自ら決意した。 失うのは生命か右足か究極の選択まだ寒さが残る三月。午前二時。ピンポーン。「こんな時間に誰?」上着を羽織りながら玄関を開けた。そこに立っていたのは、背筋を伸ばした警察官だった。「正典さんのご家族の方ですか」「正典の母です。どうかしたんですか?」「正典さんが、国道二号線でトラックとの事故に遭いまして……」「え……、正典は無事ですか?」「現在、病院に搬送中です」動転した母は、兄と一緒に俺が運ばれた病院…
小説 『薔薇のしるべ』 【第9回】 最賀茂 真 バラを通して心が交わる瞬間、そして"演技"を越えた本当の声──二人の距離はまたあの頃みたいに戻れるのか… 【前回の記事を読む】あんなに一緒だったのに。月日が二人を分かち、別人のように見えてしまうほど残酷に時は経ってしまった。「とても丁寧に薔薇を見てくれていたわ」と、典子は茉莉に目を戻して言った。茉莉は無言のままだったが、典子に向いていた瞳が上目に揺れた。「きっと笑われると思うけれど…」、一瞬言い惑った後に続けた。「こんな嬉しい事、本当に現実なのか……まだ半分、夢の中にいるようなの」少しして茉莉から低…