俳句・短歌 短歌 自由律 2021.01.02 句集「曼珠沙華」より三句 句集 曼珠沙華 【第23回】 中津 篤明 「冬花火 亡び 行くもの 美しく」 儚く妖しくきらめく生と死、その刹那を自由律で詠う。 みずみずしさと退廃をあわせ持つ、自由律で生み出される188句。 86歳の著者が人生の集大成として編んだ渾身の俳句集を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 木挽けぬ木挽 父は 秩父の 深緑 瞑(めつむ)れど 雪 降り続く 父の霊 雪柳 父の 孤独も 闌(た)けしかな
小説 『毎度、天国飯店です』 【第6回】 竹村 和貢 サークル勧誘チラシの前で、『徒然草』を抱えた美人と出会った…。 天国飯店の定休日は毎週火曜日。アルバイト生四人で、月曜から土曜の間の五営業日を分担する。四人のうち誰か一人が二営業日に入る。その者以外の三人のうちの一人が日曜日に店に入る。日曜日は大学が休みなので、朝の十時から閉店の午後九時まで十一時間店に入ることになる。「ほな、俺、明日もバイトやさかい、おっちゃんに自分のこと話してみるわ。多分、おっちゃんも構へん言わはる思うねんけど」夏生は、「できない」とは思…
小説 『シュバルツ・ヴァルト』 【第3回】 萬野 行子 育成選手となり親元を離れ転校してトレーニングセンターへ通う日々 中学に入ると急に試合が増え、行動範囲も広くなった。スイミングスクールからは必ず誰かが引率にやってきた。小学校の頃は、父や母も来ていたが、中学生になった頃から、親がついてくるということが嫌になった。大きな試合のときにはこっそり来ていたが、小さな試合のときには試合があること自体、親に報告しなくなった。「来てくれなくてもいい」と言ったこともある。そのときの両親の寂しそうな顔は未だに脳裏にある。その頃だ…