それでも普段は必ず定時に起きるけど、今日ばかりは早い時間に母に促され、不承不承布団から這い出てきた。

寝ぼけ眼でご飯とみそ汁、焼き魚、海苔、といういつもの朝ご飯を食べる。料理は自分でもよく作るけど、母親のみそ汁が大好きということもあり、寝起きの悪さも相まって、朝ご飯を手伝うことはまずなかった。

家から大学までは、駅まで五百メートル+電車で五駅+学校まで五百メートルと近い。おまけに電車は込み合う方向と逆なので快適に通学することができる。高校は少し離れた女子高だったので、その高校時代よりも通学時間は短くなる計算だ。

それでも化粧なんかすることを考えると、そんなわずかな時間は消し飛んでしまう。普段よりゆっくりと口を動かしながら、そんなことを考えていた。食事の後、母に引きずられるように、洗面台の前に座らされた。

母の監視下で、むすっとしつつぺたぺたと化粧を施していく。

「お姉ちゃんもともときれいやけど、えらく変わるね。ええやん。めっちゃモテるんやないの?」と鏡に映り込むパジャマ姿の妹が、なぜか嬉しそうに肩を叩いてくる。

「何いうてんのよ」と言い返すも、その隣の母も「恵美もようやく大人ね」といつになくニコニコしている。この二人を見ているとなんとなくそんな気がしてきて、面倒くさいけどありなんだろうなとわざとらしい笑顔を作ってみた。

この日のためにあつらえた黒いタイトスカートスーツに身を包み、少し余裕をもって母と家を出た。こんな格好でまだ見ぬたくさんの友達と会うことを思うと、妙な緊張が付いて回った。