それでも普段は必ず定時に起きるけど、今日ばかりは早い時間に母に促され、不承不承布団から這い出てきた。
寝ぼけ眼でご飯とみそ汁、焼き魚、海苔、といういつもの朝ご飯を食べる。料理は自分でもよく作るけど、母親のみそ汁が大好きということもあり、寝起きの悪さも相まって、朝ご飯を手伝うことはまずなかった。
家から大学までは、駅まで五百メートル+電車で五駅+学校まで五百メートルと近い。おまけに電車は込み合う方向と逆なので快適に通学することができる。高校は少し離れた女子高だったので、その高校時代よりも通学時間は短くなる計算だ。
それでも化粧なんかすることを考えると、そんなわずかな時間は消し飛んでしまう。普段よりゆっくりと口を動かしながら、そんなことを考えていた。食事の後、母に引きずられるように、洗面台の前に座らされた。
母の監視下で、むすっとしつつぺたぺたと化粧を施していく。
「お姉ちゃんもともときれいやけど、えらく変わるね。ええやん。めっちゃモテるんやないの?」と鏡に映り込むパジャマ姿の妹が、なぜか嬉しそうに肩を叩いてくる。
「何いうてんのよ」と言い返すも、その隣の母も「恵美もようやく大人ね」といつになくニコニコしている。この二人を見ているとなんとなくそんな気がしてきて、面倒くさいけどありなんだろうなとわざとらしい笑顔を作ってみた。
この日のためにあつらえた黒いタイトスカートスーツに身を包み、少し余裕をもって母と家を出た。こんな格好でまだ見ぬたくさんの友達と会うことを思うと、妙な緊張が付いて回った。
※本記事は、2020年11月刊行の書籍『桜舞う春に、きみと歩く』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。
★邪気指数、新陳代謝指数、正気指数
漢方の立場で見た、主人公沢波俊樹の体調を示します。本来、漢方にはこんな指数はありませんが、これに近いことをもっと細かく考えながら対処します。これらの変化は人によって異なります。
●邪気指数
体の中に溜まった不要なもの(邪気)の量を示す指数です。邪気は誰の体の中にもあります。食事の質や偏り、嗜好品、食べる時間などで変化しやすく、新陳代謝指数が下がり排出が悪くなることでも上昇します。邪気がかゆみの元にもなることがあります。ここでは50~150を正常範囲とします。150を超えると体調を崩しやすくなります。ただし、正気指数が高い方は、邪気指数が高くなっても体調を維持することができます。
●新陳代謝指数
体の中の、良い物(正気)、悪い物(邪気)がどれだけスムーズに動いているかを示す指数です。通常人が生きていく中で、良い物(新)を取り入れて、いらないもの(陳)を排出しています。それがスムーズに動いていること(代謝)が大切です。飲食の消化吸収、大小便での排出、血流、発汗などトータルの指数とします。運動不足やストレスなどで低下します。ここでは70~100を正常範囲とします。新陳代謝指数が下がると邪気指数が上がりやすくなり、下がっているときには正気指数も下がっていることが多くなります。
●正気指
数
体の元気(エネルギー≒正気)の指数です。バランスの良い飲食で満たされ、ほど良い休息をとることで作られます。逆にストレスや過労で低下します。正気が少なくなると、体のだるさや意欲の低下がみられ、免疫をコントロールする力が弱り、かゆみを抑えられなくなり、症状が悪化します。ここでは70~100を正常範囲とします。正気指数が高いと新陳代謝指数は上がりやすく、邪気指数が少々高くても生活に支障はありません。