なぜ、認知症なんかになるんだ――。物を失くす、使えなくなる、物忘れが増える……。刻々と変わりゆく妻の様⼦に⼾惑う⽇々。初めての介護に苦戦しつつも、⾃分なりの⼯夫をして乗り越えてきた。葛藤と妻への感謝をありのままに綴ったエッセイを連載でお届けします。

夫の外出を不安がる妻…チラシで作るゴミ箱の折り方を教えてみる

妻の若い頃から、近所で気心が合い仲良くしてくれている友人がいた。

私も懇意にして互いの家を自由に出入りするほどの仲だった。私のゴルフ好きも知っていて、
「お父さんがゴルフに行かれるときは、遠慮なしに言って下さい。豊子さんと一緒に外出しておいしいものを食べたり楽しく過ごします」
と言われ、私もその言葉に甘えて、たびたびお世話になっていた。

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しかし、どうしても、その方の都合のつかない日や、たまに複数回ゴルフに行く日は、頼みにくく一人で留守番をさせなくてはならなかった。

介護疲れを感じる日々が多くなった。唯一の息抜きは、趣味のゴルフだった。ゴルフは、10時間くらい自宅を空けることになる。心配なのは、妻をいかに長時間早朝から夕方まで、おとなしく自宅に留めて置くことができるかにあった。

プレー中でも「今頃、何をしてるかな? どうしてるかな?」と心配や不安がよぎるとゴルフに集中できなくなっていた。ゴルフは、メンタルがプレーを左右するスポーツだけに、その結果はもろにスコアに表れた。

妻が、一人で留守番をするときテレビ観賞ばかりでは疲れて飽きてくる。

何か長時間作業をさせる方法はないかと模索していた。妻は、器用で根気強さを持った性格だ。きっと、できる作業が、あるはずだと思っていた。

あるとき、新聞の「チラシ」を使って、机の上に置く折り紙ゴミ箱の作り方を教えて貰った。妻の時間潰しは、これだと思った。早速、折り方をマスターした。考えながら手先を使うので、脳にも良い。また「ゴミ箱を作る」と言えば、綺麗好きの妻は、喜んでやってくれると思った。