なぜ、認知症なんかになるんだ――。 物を失くす、使えなくなる、物忘れが増える……。 刻々と変わりゆく妻の様⼦に⼾惑う⽇々。 初めての介護に苦戦しつつも、⾃分なりの⼯夫をして乗り越えてきた。 葛藤と妻への感謝をありのままに綴ったエッセイを連載でお届けします。
「キャ~、ワァ~」真夜中の奇声で起こされる
2016年1月の出来事だった。午前2時から3時にかけてその症状が現れた。
寝ていた妻が、突然半身を起こして「キャー」と大きな声で2階の奥座敷を指した。
「そこに泥棒がいる。男の人がこっちを向いて睨んでいる」
と叫んだ。びっくりして、「どうした!」と電気をつけた。目をつり上げ手を震わせて恐い形相をしていた。私は、すぐに奥の部屋の電気をつけた。
「ほら。誰もいないよ。お父さんがいるから、もう、大丈夫」
と言って背中をさすって安心させた。しばらくすると落ち着いてくれた。
「朝まで、まだ時間があるので、トイレにでも行こうか」
と誘い、妻を2階から1階のトイレへ誘導した。
その後も、
「ワァ~大きな犬が、こっちに来る」
とか、
「小さな子供が、そこの隅から出たり入ったりしている。こっち向いて笑っている」
とか、いつも深夜に起こされて、私は、睡眠不足に陥った。
幻視や幻覚が連続して起こるようになっていた。診察の際、先生に伝えた。再度、病院でMRIを撮ることになった。その結果「レビー小体型認知症」をも併発していることが分かった。