近隣の人に作り話をする…認知症を関係者に公開した

新築の一戸建てを買い40年以上現在の自宅に住んでいる。

その10軒が隣組になった。妻は、ご近所に対していつも愛想良く振る舞い挨拶したり立ち話をしてコミュニケーションを取っていた。特に向かいの家と両隣とは親しくしていた。また、若い頃は、気の合った隣組の人たちと旅行や食事会などをして交流を深め互いの気心も分かっていた。

知症になってしばらくしたある日。隣の奥さんから、
「ご主人。お母さんを引き取られて、一緒に暮らされるのですか?」
とか、
「ご主人は、また、M電器に勤務されるのですか?」
とかを妻から聞いたと言われ、びっくりした。

この際、隠さずに正直に伝えておこうと思い認知症であることを伝えた。

「そうでしたか。認知症とは気付きませんでした。これまでにも、ときどき、同じことを言われたり、おかしなことを言われていたので、おかしいなぁとは思っていました。これから、そのつもりで、お相手をさせて頂きます」
と言ってくれた。

このまま、ご近所に黙っているとまずいことが起こりそうに思った。
また、徘徊などでお世話になることがあるかもしれない。そう思い近隣の人に認知症を知らせることにした。

当時、隣組の組長をしていたので、区費の徴収の際9軒の方々に直接認知症を伝えた。伝えたことによって同情やお見舞いの言葉、認知症に対する情報などいろいろと教えてもらった。有り難かった。公表してほんとうに良かったと思った。

妻がこれまでお世話になった関係先、知人、友人。親戚にも電話で伝えた。びっくりされたが、それぞれの方々からお見舞いや情報提供、支援、協力を得ることができた。

認知症は、隠さずに公表した方が、皆さんから関心を持ってもらい、皆さんから支えてもらえることを体得した。とても有り難く思った。