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宗像は次々と明らかになるフェラーラの事実を目の当たりにし、固唾を飲んで耳を傾けていた。エドワード・ヴォーン氏は真実を全て抹殺することは出来ず、エリザベスの出生時の名前を、ミドル・ネームとして残したのだと、その心中を察した。
エリザベスは紅茶を一口含むと大きく深呼吸し、更に話を続けた。
「私は両親の過剰な愛情のもとに育てられました。けれども親の仕事である絵画や芸術全般に対して、理由のない反発もありました。それで、ロンドンを離れたい一心もあって十九歳のときにアメリカに渡ったのです。大学、大学院、そして就職と、十二年間をロサンゼルスとニューヨークで過ごし、心理学とヴィジュアル・デザインの勉強をしてきたのです。
卒業後、ニューヨークのデザイン事務所で五年間働きましたが、私にとってはこのときが一番充実した時代でした。再びロンドンに戻ってきたころには三十一歳になっていましたが、両親や親戚とは良い関係を保ってきたと思いますし、多くの友人にも恵まれました。
でもこの件に限って、他人に相談するというわけにもまいりませんでしょう、まずは一人で調べてみることにしたのです。最初は、私が生まれ、そして小学校時代を過ごしたブリストルからでした。ブリストル市をご存じかしら?」
「いいえ。どの辺に?」
「ブリストルはロンドンの百数十キロ西に位置する、イングランドの南西部で最大の都市です。エイボン川の美しい自然に恵まれ、かつてはイギリス第二の港町だった時代もある古い街です」
「………」
宗像は黙って聞いていた。