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エリザベスはこめかみの辺りを指の腹で揉んで、本当にまいったという仕草をした。ヴォーン家のような名門の家族が、わざわざロンドンから離れた別邸で出産したとは?
恐らく母親は前もってブリストルに住み着いて、偽装出産の準備をしていたに違いない。病院では産まずに、主治医を使って自宅で出産したことにでもしたのだろう。用心のため、小学校時代はブリストルで過ごさせた。
だからブリストルではあまり外にも出ず、友達もごく限定されていたのだろう。宗像にも当時の様子をリアルに想像することができた。恐らくエリザベスも同じ思いに違いなかった。
「ブリストルから戻ると、やはり自分はヴォーン家の子供ではないという気持ちがますます強まりました。それで次にどうしようかと考えていた矢先。ええ、友人の結婚披露パーティーでポルトにお呼ばれされて。
彼女とはそれほど親しい関係ではなかったのですが。これをきっかけに、ピエトロ・フェラーラが亡くなったと言われるポルトを訪ねてみることにしたのです」
「それでポルトに来られた……」