8

エリザベス? なぜエリザベスが? 否、これはエリザベスではない。アンナのはずだ。そうすると……エリザベスとアンナは? エリザベスは絵の中のアンナとまさに同じ顔だ?

宗像は混乱の真っ只中に置き去りにされた思いだった。どこかで出会った記憶のある女エリザベスとは、フェラーラが描いた絵の中の女=アンナと瓜二つだったのである。

「なんということか!」

自問自答しながら、心の中で幾度も繰り返してそう叫んだ。宗像は絶句し、全身が総毛立つような気持ちに襲われた。そしてそれは滾(たぎ)る熱い血となって身体を駆け巡った。

精神状態は大きく渦を巻いたように高揚し、これまで体験したこともないような感情が湧き起こり、興奮は頂点を極めた。しかし、徐々に興奮が収まると、続いてある恐ろしい推理に到達して大きく身震いをした。

「するとエリザベスとは? そうか……あの写真に写された……ユーレと書かれていた方の……もう一人の女の子? 恐らくは、この世に存在するはずのない双子の一人だろうか? すると、彼女は……なんと、ユーレ・フェラーラということなのか? いや、そんな馬鹿なことが? こんな恐ろしい偶然などあろうはずが……」