山よりきて畑にとび交ふ赤とんぼ 好みの杭にいまとまりたり
鶏頭の肉襞あかく立ちつくす 憎みし一人忘らえなくに
石蕗さける地の明るさよ花茎は 葉むらを分けて立ちあがりくる
※本記事は、2014年2月刊行の書籍『歌集 忘らえなくに』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。
序文
短歌とは、日常のささいな出来事を記すものだろう。いくつかを試みた。
私の関心はもっぱら、日本の自然の美しさ、移ろいにある。小笠原諸島や八重山諸島への旅。身近な四季をりをりの移りゆく姿にそれを見出した。
私の生きながらえた七十年の歳月、その間に世界や日本で起きたさまざまな出来事を、ありのままに記しておきたい思いが、胸の底からふつふつと湧き立ってきた。
これはまさしく自分史の一部を記すことでもある。
二〇一四年一月十五日
松下正樹