俳句・短歌 歴史・地理 歌集 歴史 2020.11.04 歌集「風音」より三首 歌集 風音 【第14回】 松下 正樹 何気ない日常にある幸せを探しに。 優しい風を運ぶ短歌集を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 炎天の街路は続く家いへの 差し出す日陰をひろい歩まむ 一つが鳴きいっせいに鳴く あぶら蟬 森をゆるがす声のはげしさ 花薊、棘あるゆゑに摘みかねし 忘れねば そのむらさきを恋ふ
エッセイ 『プリン騒動[人気連載ピックアップ]』 【新連載】 風間 恵子 「そんなプリンなんか作ってないで、早くメシのしたくしろ!」台所で一挙手一投足に怒り狂う義父。言葉の暴力が鉛となって心臓を突き抜けた。 ある晩のことだった。三人で、夕食のしたくをしていた。この三人と言うのは、舅(しゅうと)・姑(しゅうとめ)・嫁すなわち、私の事である。台所は女の神聖な場所と考えられているのではないか。しかし、この家では、舅が当たり前のように立つことが多い。自分が調理したものは自慢をするが、人の作った料理は決して、美味しいとは言わない。逆に貶す事に喜びを感じるタイプである。野菜の切り方から、味つけまでを一つ一つ指摘…
小説 『溶けるひと』 【第16回】 丸橋 賢 知人家族の葬式から帰ると、玄関には脱ぎ捨てられた靴が... 目に入ってきた光景をすぐに信じることが出来なかった。 良助は幾度も畳に手をついて頭を下げるが、言葉がない。西向きに敷かれた布団に横たわった未知夫の顔には白い布がかけられ、菊の花が活けられ、線香の香りが満ちている。十一人の弔問客で部屋はいっぱいだ。「ご愁傷様です。心からご冥福をお祈りします。私どもも未知夫君のことを一緒に受け止めさせていただいて、ご両親のお力になりたいと思います。どうかお力を落とさないで」中井は気丈にそこまで言って言葉に詰まった。実は…