俳句・短歌 歴史・地理 歌集 歴史 2020.11.04 歌集「風音」より三首 歌集 風音 【第14回】 松下 正樹 何気ない日常にある幸せを探しに。 優しい風を運ぶ短歌集を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 炎天の街路は続く家いへの 差し出す日陰をひろい歩まむ 一つが鳴きいっせいに鳴く あぶら蟬 森をゆるがす声のはげしさ 花薊、棘あるゆゑに摘みかねし 忘れねば そのむらさきを恋ふ
小説 『アントライユ』 【第3回】 鈴木 恋奈 彼の父親と私の母が不倫。親族双方殴り合いの大事件になった。だが、彼の母親は「慰謝料は要らないから」とだけ言って姿を消し… 【前回の記事を読む】彼にピアスが増えたら、私は自分の耳にも印をつけて、ニードルを取り出す…「痛い痛い!」それでも彼とお揃いがよかった私たちは新潟県の外れにある小さな町で育った。私は、ボロボロのアパートで生まれた。母親の稼ぎが少なく、泣く泣く住んでいた。幼少期に千春がそのアパートの隣の部屋に引っ越してきたのだ。千春の母親の後ろに隠れる彼の光る涙は私の心を潤した。今でも鮮明に思い出せる。彼の目は女の…
小説 『アントライユ』 【第9回】 鈴木 恋奈 私達の親が死んだ。二人の葬式は酷いものだった――嬉しくて咽び泣いているかのような雨にずぶ濡れになった私と彼は… 【前回の記事を読む】「癌なんだ…5年くらい前から」突然そう打ち明けた彼。混乱する私を前に、彼は腰を抑えて膝から崩れ落ち…二人の葬式は酷いものだった。飲酒運転による事故死。自業自得だと思う。不倫なんてした天罰。死体はグチャグチャで顔も判別がつかなかったから、一緒に弔うことになったらしい。予想はしていたが、親族たちが互いに罵り合い、殴り合いにまで発展した。一番驚いたのは、私のおばあちゃんが千春のおば…