俳句・短歌 歴史・地理 歌集 歴史 2020.11.04 歌集「風音」より三首 歌集 風音 【第14回】 松下 正樹 何気ない日常にある幸せを探しに。 優しい風を運ぶ短歌集を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 炎天の街路は続く家いへの 差し出す日陰をひろい歩まむ 一つが鳴きいっせいに鳴く あぶら蟬 森をゆるがす声のはげしさ 花薊、棘あるゆゑに摘みかねし 忘れねば そのむらさきを恋ふ
小説 『泥の中で咲け[文庫改訂版]』 【第7回】 松谷 美善 母さんが死んで、一人で生きていかなければならなくなった。高校中退後、月6万円での生活。お墓も作れず母さんの骨と一緒に暮らした 一日中、使いっぱしりをして、クタクタになって部屋にたどり着き、買ってあった少しの菓子を貪り食うのもそこそこに、重たい泥のようになって、布団代わりの寝袋に潜り込む。小さい頃から運動習慣のなかった俺には毎日が、筋肉痛が出るほどキツかった。毎朝、四時に目覚ましをかけて、まだ眠くてフラフラしながら起きる。風呂のついている部屋は、最初からはもらえない。申し訳程度についた小さなキッチンの流し台で、頭を洗って…
小説 『眠れる森の復讐鬼[人気連載ピックアップ]』 【第32回】 春山 大樹 いじめ加害者女から花火大会に誘われ、「あの女が俺に振られた時にどんな惨めな顔をするのか見物じゃないか」と笑う元親友 【前回の記事を読む】「俺は絶対殺されない!転院して、再生医療を受けてまた歩けるようになるんだ。」復讐に怯え、個室にボディ-ガードを雇ったらしい。「検査の結果、特に異常はないようです」病室に回診に来た山下医師は事も無げに告げた。「異常ないって、じゃあ一体何なんですか」海智はいささかむっとして訊き返した。以前に比べると多少は仲良くなったのだが、それにしてもこの女医は他人を苛立たせる天賦の才があるとし…