第Ⅰ部 医療経営戦略

第2章 医療におけるマーケティング戦略

マーケティングコンセプトの変遷

時代とともにマーケティングコンセプトは変化してきています。

大量生産時代のいかに効率的に製品を作るか?といった生産志向から製品志向(いかに良いものを作るか?)、販売志向(いかに上手に売るか?)、顧客志向・マーケティング志向(いかに顧客に満足を与えるか? いかに効果的に狙った顧客に狙った製品を売るか?)、そして現在では社会公共性志向(企業の利益や顧客満足だけでなく、社会との調和も図る)へ変化しています。

医療においても同様のマーケティングが必要で、これまではいかに効率的で良い医療を提供するかに主眼に置いてきましたが(医療マーケティング1.0)、その後いかに患者のニーズを引き出し、いかに患者に満足を与え、いかに効果的に狙った患者に狙った医療を提供できるかが求められています(医療マーケティング2.0)。

しかし、個々の顧客ニーズを理解して、それに対応することは、必ずしも社会全体の利益に貢献するとは限りません。これは特に公共性の高い医療においては当てはまる部分が多いかと思います。いわばマーケティングにおいても部分最適から全体最適への視点の移行が求められます。

医療の特性上、もともと社会公共性志向はあるものの、これまでの病院経営は自施設の発展と他院との競争による勝利を目指したマーケティング戦略が目立ちましたが、今後は地域や社会の発展に病院がどう寄与できるかという公共的視点も必要です(医療マーケティング3.0)(図1)。

[図1]医療マーケティング3.0