小児神経9 わらにもすがる親の思い

医師になって2年目の秋、現在私が勤める秋田県立医療療育センターの前身、秋田県小児療育センターに3か月間派遣された。1982年に新設されてまだ5年目の療育センターは、若々しいスタッフであふれていた。一般病院とは異なり、入院しているのは訓練目的の乳幼児と付き添いの母親が中心だった。

5〜6人の入院患者の中で、一人だけ県外から来た女の子がいた。看護師に尋ねると、兵庫県の淡路島から来たとのことだった。秋田に親戚や知人がいるわけではなく、当時、療育センターで行っていた脳性麻痺に対するはり治療を受ける目的で、はるばる秋田へ来たのだと聞かされた。

脳性麻痺は、難産などのため、赤ちゃんの脳に障害が残り、手足の動きに異常をきたす疾患だ。根本的治療法はまだないが、早期からの訓練が機能改善に有効とされている。しかし、重症になるほど、訓練の効果を上げることは難しくなる。

療育センターの初代センター長は、脳性麻痺の治療成績を少しでも良くしたいとの思いから、中国で盛んに行われているはり治療を秋田でも行おうとした。中国から専門のはり治療師を療育センターに招き、脳性麻痺に対するはり治療を始めた。


(注1)バッグ換気:バッグ式手動呼吸。手動式バッグの先端に繋がったマスクで口鼻を覆い、手動で強制換気すること。

試し読み連載は、今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。

 

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