バニーガールの夜
1 丁寧すぎる彼氏の話
死んだ夫は丁寧な人だった。といっても、言葉づかいが丁寧だとか態度が丁寧だとかいう意味ではない。亡くなったときの年齢がまだ若かったし、それを抜きにしても、いわゆる紳士とは対極に位置するような人柄をしていた。
むしろ私に対しては持ち前の飾らなさのほうが目立っていて、ではどこが丁寧なのかというと説明が難しい。
でも私は本気で、夫は誰よりも丁寧な人だったと考えている。
誰よりも丁寧、なんて私が言うと彼は、あんたにだけなんやで、と照れるでもなく真面目に言うのに違いなかった。
本当に、丁寧すぎるくらいに丁寧だし、やさしすぎるくらいにやさしい人だった。私が彼のことを他の人に話すのをきっと笑って許してくれるくらい、やさしかった。
彼が病気で死んでしまってから何年もたった今でも、ふとした瞬間に、彼が隣にいるような気がしてしまう。
あの人を失うなんて今でもやっぱり耐えられない。
こんな思いを一人で抱えてもいられない。
私もいつかは死んでしまうのだし、それが例えば来年のことでないとも限らない。彼のことを唯一知っている私まで死んでしまって、彼のことを誰も知らなくなってしまうなんて、そんなのは間違っているとさえ思えてくる。静かに、ふつふつと。