俳句・短歌 歴史・地理 歌集 古事記 2020.10.23 歌集「古事記物語・異聞」より三首 歌集 古事記物語・異聞 【第24回】 松下 正樹 私たちの太陽(アマテラス)はどこへ行ったのだ? 日本人の原像がまざまざとよみがえる。 日本最古の史書『古事記』に登場する神々の世界を詠う、他に類を見ない叙事的な歌集。叙情的な文語と明快な口語を絶妙に組み合わせながら、神々の悲哀と愛憎をつぶさに表現する。 日本の神々は、民と交わり、民とともに働き、人間同様死にゆく存在でもある。 王国の成立と興亡の歴史が秘められた『古事記』の世界を、人々の悲しみと喜びを歌で再現。日本人の原点の物語を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 あなたさまより貴い神が在しますに よろこび笑うと宇受売は答える 自尊心傷つけられし天照 岩屋の戸を開け姿をあらはす 戸のわきに隠れて居たる手力男 天照の手をにぎりはなさず
小説 『アイアムハウス』 【新連載】 由野 寿和 静岡県一家三人殺害事件発生。その家はまるで息をするかのように、いや怒っているかのように、大きく立ちはだかり悠然としていた 午前十一時。サイレンを鳴らさず、車両は静岡県藤市十燈荘(じゅっとうそう)に到着した。静岡中央市にある県警本部から十燈荘までは、藤湖をぐるっと大回りして藤市経由でトンネルを通り、小山を登ることになる。藤湖を見下ろす高級住宅街、十燈荘は、土曜の昼だが活気はない。既に外部への交通規制が敷かれているとはいえ、不気味に静まり返っている。ここで殺人事件があったことを、住民達が知っている気配はなかった。その家…
小説 『庭師と四人の女たち』 【第19回】 草原 克芳 冷蔵庫で冷やしておいた庭師からの貰い物の赤い果物を、ガラス皿に載せて持ってきた。一応は、上客扱いなのだ。 近くのアパートの一室にも、事務所と称する六畳の部屋を借りていて、そこでタウン誌やらPR誌などの編集をしているらしい。いつも忙しがっているが、公園で何時間もタバコを喫っていたりするので、本当はそれほどでもないようだ。「あら、二村さんごめんなさい。いらしてたの? ちっとも気がつかなかったわ」紺色の作務衣姿の睦子は、両拳を腰のところで小さく握り、かけっこのようにしておどけながら、小走りで寄って行った。…