子犬のワルツ

子犬の醸(ジョウ)は、「内弁慶の外地蔵」だった。

犬用の粉ミルクは飲み終わって、カリカリのドッグフードを食べられるようになったものの、昼間は犬小屋で丸くなって眠っている。

目が覚めると、何がそんなにうれしいのか全速力で部屋中を駆け巡り、ごみ箱を引っくり返し、紙屑やらビニール袋を引っ張り出す。それを玩具(おもちゃ)にして思いっ切りエネルギーを発散する。

犬好きの父は仕事から帰ってくるのが遅かった。当然、内弁慶の子犬の世話は母の役割となる。

もともと母は猫好きだった。物心ついたときから猫を飼っていて、醸がやってきたときも、耳と鼻先が焦げ茶色で瞳がブルーの猫がいた。

醸はさっそく猫を追いかけ、猫の餌を平らげた。仕方なく猫の餌は、キッチンカウンターの上に置くようになった。

母はもっぱら猫の自立したところが好きだったが、ミニダックスの醸となると、餌とトイレの世話だけでなく、遊び相手にもなってやらないといけない。それも執拗にいくらでも遊んでくれ遊んでくれ、とせがんでくる。

一か月を過ぎた頃から、こちらが見ていてもはっきりわかるほど、母にストレスが溜まってきた。

父は犬好きとはいえ、散歩に連れて行くわけでもなく、餌をやるわけでもない。犬を見るとやたらと頭を撫で、「お手」や「待て」をさせる。

家事は一切母に任せて、掃除洗濯はもちろん料理は何もできない。電子レンジが備わってからは、「レンジでチン」だけはできるようになった。ただ温めるだけであれば。

 

「もう一度読みたい SmartNews人気作ピックアップ」の次回更新は10月25日(日)、12時の予定です。

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