麻衣のページ
病院でおばあちゃんと話をした。
「最近、社会科の授業で日本の農業について勉強したんだけど、そういえばなぜ農家を継がなかったのかをパパから聞いたことがなかった。なんとなく聞きづらいからおばあちゃんに聞きたいと思って」と土曜日面会に行った時に切り出した。おばあちゃんは少し黙ってからゆっくりと話し始めた。
「そうね。パパが農家を継がなかったのは、将来性がないと思ったからだと思う。そう言って都会に出ていく人が沢山いたので、農家の後継者問題はパパの世代では実は大変な問題だったの。
それでもパパは農業問題を解決するため、経済学部に入学し、日本だけでなく海外の農政についても勉強していたの。そして夏休みに帰ってくると、農作業を手伝いながらおじいちゃんと将来についてよく話をしていたわ。
パパとおじいちゃんは意見が違うこともあったけど、実はおじいちゃんはパパと一緒に農作業をしながら将来の話をすることを喜んでいたの。二人は若い人が地元で働き続けられる方策がないかずっと考えていた。
だからこそ、それぞれが持っている農地を人に貸すことで、米だけでなく野菜などを作ったり家畜を育てたりしながら、一年中現金収入が得られ、農家が潤う仕組みを作れないかと考えていた。昔のように専業農家が立ち行かなくなっているのは、悲しいけれど今の現実だった。
だから昔通りで何とかなるという考え方は、時代遅れだといつも言っていた。でも、その考え方はパパが学生の時にはおじいちゃんには受け入れてもらえなかったのよ。おじいちゃんの本心はパパの考え方に賛成だったと思う。
でも婿養子としては、本家の人の意向を引き継がなければいけなかったから。農家に学は必要ないと思っている本家の人たちには『だから東京の大学なんかに行かせるのは反対だったんだ』とまで言われたの。私のお兄さんの知り合いも『就職は地元でする』という約束で東京の大学に行ったら、東京の魅力に惑わされ帰ってこなかった人が何人もいると聞かされていた」
次回更新は10月27日(火)、7時の予定です。
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