「麻衣からは、家にいづらいのは僕の責任なんだと言われた。やっぱり家の雰囲気が良くないのは嫌だよね。この数日ずっと考えてきたけど、たしかに今までは何かあれば、美幸のせいにしてきた。
今回は、僕と親父の問題なのにいつまでも昔のことにこだわって解決しようとしなかった。君たちにまで迷惑をかけてきた。親父と僕のことはおふくろと三人で時間をかけて話をしてみるよ。長い時間放っておいたから、すぐには解決できないだろうけれど、親父やおふくろの気持ちを聞いておかないと二人のこれからも心配だから。
本音を言うと離れて暮らしていたせいか、二人はずっと元気でいると思い込もうとしていたんだ。自分も年を取ってきたのに、二人は僕が長野を出た時と変わらないでいると勘違いしていた。そしておふくろや妹と電話でやり取りをすることで、親を見ていると勘違いしていた。
本当に愚かだよね。職場の先輩に相談したら同じ問題を抱えている人が結構多くて、自分だけではないことがわかってほっとしたんだ。ついでに言われたのは、『奥さんに気を遣うように』ということだ。そうしないと本気で捨てられると思っている同僚が多かったんだ。
離婚を切り出される人も結構いるらしい。まさか世の中そんな風になっているなんて知らなかった。本当に自分は君に甘えてきたんだということを改めて思い知らされたよ」
「ああ~。また問題をすり替えている。本当はこんなことを言いたいんじゃない。本当に僕はダメな人間だ」と心では思っている。
「私はこの問題は家のこともあるけれど、あなたがお義父さんやお義母さんのことをどう思っているか、ちゃんと話してこなかったことも大きいと思っている。私だってお義父さんやお義母さんと仲直りしたかったけど、その方法が見つからなかった。あなたに頼りたかったけど頼れなかった。あなたは仕事でいつもへとへとで、家はエネルギーをチャージできるシェルターにしたかったんだものね。
だから自分の言うことを、いつも受け止めてくれる優しい奥さんを演じることで、二人の生活を保ってきた。私のことをもっと見てほしかったけど、お互い余裕もなかったから後回しにしてきた。私は諍いは嫌いだし、けんかをするってエネルギーがいるでしょう。家事と育児と仕事に追われている私にそんなパワーは残っていなかったから。
でも少しずつあなたとの気持ちのずれが積み重なっていったわ。『僕の言う方が正論だ』という顔をされるたびに、その顔が嫌いになっていった。だから気がついてくれて本当にうれしい」
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