第一部
この物語は、ロマノフ王朝の皇女アナスタシア伝説を中心としたファンタジーである。
皇女アナスタシア――それはロシア革命によって皇帝ニコライ二世と、その子供たちが殺された。ただ一人生き残ったのがアナスタシア――。
そんなうわさが取りまくヨーロッパで莫大なロマノフの財産権を持つ、アナスタシアの偽物が現れては消えていた。
時は20世紀初頭のパリ。
嵐の夜――荒らされた部屋の一室で倒れている一人の老人。拷問されたことは一目でわかり、床には血文字で、「皇帝の娘たち」と書かれていた。老人は最後に何を伝えようとしていたのだろうか。
2日後の夜、街の掲示板に誰かが糊付けしている。中味は何だろう。地獄新聞だ。
〝ロシアの金細工師、惨殺される。インペリアルイースターエッグのゆくえは〟
そんなある日、少女は探していた。小さな猿を。リスザルを。
「困ったわ。どうしよう」
その時、頭の上から声がした。リスザルだ。猿は木の上に登り、奇声をあげていた。手をのばしてつかまえようとしても届かない。
すると、スラリとした姿態が手をのばす。手にはお菓子を持っていた。猿はお菓子を食べようと降りて来た。スラリとのびた手は猿をつかまえる。
「マドモアゼルどうぞ」
「ありがとうございます。ムッシュ」
帽子を真深にかぶったムッシュからは、いい匂いがした。少女が一瞬放心すると猿は少女の手を逃れ、ムッシュの頭に乗って来た。
「あらあらあらあら」
猿は暴れ、ムッシュの帽子をはぎ取ると、そこには男装の麗人がいた。麗人は再び猿をつかまえると、今度は気をつけてウィンクした。そして麗人は、はっとする。お礼を言う少女の薬指には大きなダイヤモンドが輝いていたからだ。
麗人はしばらく考えこむと、
「私はエリカ。よろしくね」