【前回の記事を読む】20世紀初頭、ロマノフ王朝の財宝をめぐる噂が渦巻くパリ。男装の麗人と、秘密を抱えたサーカス少女――運命の出会いが始まる

第一部

「はい。5年前フランスの船が漂流して、私たちがお助けしました。そこでフランス語を知りました。フランス人の中には、日本人女性と結婚して日本に暮らしている人もいます」

エリカは納得したようにうなずくと、

「私はエリカ」

エリカにつつかれ、

「私は、私はマイと申します」

「お嬢様方、私はハナです」

エリカはハナの腕をつかむと、

「次のお芝居までまだ時間があるでしょう。一緒に万博をまわりましょう」

万博は素晴らしいものだった。

イギリスの水晶宮。フランスは友好国のエジプトの展示を中心にしていた。そして最後にロシア館についた。するとマイは入ることに躊躇した。

「どうしたのマイ。早く入りましょう。さあ」

「ハイ……」

奥に入る3人。丸い吹き抜けのホールの中心には、金と宝石がちりばめられたインペリアルイースターエッグが置かれていた。

真っ青になるマイ。その姿を観察するように見つめるエリカ。

「これはロシア皇帝のエッグよ。革命で亡くなった。家族におくったものの一つ。誰かがエッグを探してる。殺人までおこってる」

「一人目はイギリスの大富豪。いつもエッグを自慢していたわ。二人目は革命をのがれたロシア人。彼もエッグを持っていた。3人目は父の友人のアメリカ人。高価なものがあったのに盗まれたのはエッグだけ。ラファエロがあったのによ。

4人、5人と続いて6人目がファベルジェ。金細工師。エッグをつくった張本人。彼もエッグを所有していた。息もたえだえのファベルジェは〝皇帝の娘たち〟と書き残して死んでしまった。これって何?」

シーンとする三人。エリカは笑いながら、

「これが私の地獄新聞の中味。これからもよろしくね」

ハナがもじもじして、

「そろそろみんなの所に戻らないと」

「そうね。ごめんなさい勝手に呼び出して」

3人は、それぞれの家路についた。