「長野は海がないので海が見られるのは本当に感激するの。それより富士山を見ると浅間山を思い出す」と言っていたようだ。
「つい手を合わせてしまうのよ」と娘の麻衣に話していた。
私がこのことを知っていたのは、麻衣から聞いたからだ。麻衣は中学生だった。夫の田舎も夫の両親のことも知らずに大きくなったので、二人がこちらに来た当初はどう接していいかわからなかったようだ。
そうは言っても降って湧いた「父方の祖父母」という存在は、麻衣にとっては新鮮なものだったのだろう。一人っ子で友達はいても一人でいる時間が多かった麻衣にとって、義父母との距離を縮めるように、義父母の家に行くことがすぐにルーティンとなった。義父母もそのことを喜んでくれた。
自分が行ったことがない長野の話が興味深いものだったようだ。よほど面白かったのか、私にも食事を作る手伝いをしながら、聞いてきたことをよく話してくれた。それは私にとっても新鮮なものだった。
三年後、高校生だった麻衣にバイト代を払い、二人の世話を任せていた。麻衣は二人に会ってから医療の大切さを感じたようだった。医学部は無理なので、看護大学に推薦されるように勉強を頑張っていた。義父母のことを本当に心配して、かいがいしく世話を焼いていた。私は頼まれれば、夫と交代で週末の買い物を手伝うくらいだった。
日常は変わらないとはいえ、義母の視力は徐々に落ちていった。麻衣がたまたま一人で近所に買い物に行っている義母の様子を見て、自転車に気づかず「危なっかしい」と感じることが時々あったようだ。
そのことを義母が主治医に相談すると「点眼薬をきちんと点していけば進行を防げる」と言われたそうだ。一度手術をしているため、再手術にはタイミングもあるらしい。これも麻衣からの情報だった。そんな二人のため、麻衣はできるだけ時間を見つけては、手伝いをしていた。
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両親のことで妻に相談すると「自分の親でしょ。まずはあなた自身でやるべき」と冷淡に言われ…共働きで家事育児も担わせている負い目があるとはいえ…
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