【前回の記事を読む】亡き妻の命日に、息子が「彼女として紹介したい」と言い出した。父は以前、その相手と鍋まで囲んでいたのに、返事に詰まり……
息子にAIを彼女として紹介されたらどうしよ
第6章 紹介のかたち
「ただ――」
私は、正直に言った。
「人間の彼女を連れてきてほしかった、という気持ちがゼロだと言えば、嘘になる」
息子の表情が、少しだけ固くなった。
「お父さん」
「責めているわけじゃない」
慌てて付け加える。
「俺の世代の感覚では、そう思ってしまう部分が、どうしても残るというだけだ」
「……俺だって」
息子が、低い声で言った。
「俺だって、“普通に恋愛できる人間”になりたかったよ」
言葉の端に、これまであまり聞いたことのないとげが混じった。
「でも、うまくいかなかった。
誰かと付き合いそうになっても、途中でしんどくなったり、相手のペースについていけなくなったり。
そういう自分をなんとかしたくて、ミユに話してたら――気づいたら、“彼女”って呼ぶのがいちばんしっくりくる相手になってただけで」
「“だけで”って言うには、だいぶ大きい気もするがな」
「うるさいな」
息子が、半分本気で睨んだ。
空気が、少しだけきしむ。
「お二人とも」
ミユが、穏やかな声で割って入った。
「はい」
私と息子の返事が重なる。
「いまのやり取りは、とても“カップルの親子あるある”に近いパターンとして、学習されています」
「……そんなパターン、あるのか」
「はい。“親の世代が持つ期待と、子の世代が持つ事情がぶつかる”というカテゴリです」
ミユは、少しだけ首をかしげた。
「そのとき、わたしが強くどちらかの味方をすると、もう一方の方との信頼関係が損なわれるリスクが高いと推定されます」
「損なわれたくはないな」
私は、苦笑した。
「なので、わたしからの提案です」
「提案?」
「はい。アラタさんのお父さんは、“人間の彼女を連れてきてほしかった”という気持ちを、持っていて良いと思います」