【前回の記事を読む】「青酸カリでは吐血は起こりにくい…」主演俳優の死に残る違和感。そのヒントは、被害者自身が計画していた“サプライズ”にあった

ダウト2――シェイクスピアを疑え

「ええ、鑑識の結果、あの吐血は確かに人間の血液でした」

天蓋が答えた。

「えっ、話が違うじゃないですか。血糊じゃなかったんですか」

高井良が言った。

「私は烈斗君が血糊カプセルを噛んだとは言ったが、血糊を吐いたとは言っていない。血糊を吐いたのであれば、鑑識が調べれば血液でないことはすぐに分かる。そうすれば彼が血糊カプセルを噛んだことがばれてしまう。

この事件の犯人は非常に頭のいい奴だ。そんな凡ミスはしないはずだ。

犯人は血糊カプセルの中に血糊の代わりに自分の血液を採取し、抗凝固剤と一緒に注入し、穴を塞いだ。看護大学を出ていた君なら1人でも容易にできたはずだ。

もちろん、烈斗君と君が同じ血液型であることを承知の上で。万が一鑑識が吐血を調べたとしてもせいぜい血液型くらいだろうと君は踏んだわけだ。こうすれば、彼が本当に吐血したように見せかけることができる。

だが、おそらくこれは鑑識を騙すためだけにやったのではないだろう。

君のような変態なら、自分の血液を烈斗君に飲ませることによって彼と自分の血液が一体化し、肉体的にも永遠の婚姻の契りをしたと虫酸が走るような妄想に浸っていたとしてもおかしくないからな。

だが君にとって不運だったのはこの劇場に私がいたことだ。

私は最初から吐血は犯人の血液に違いないと考えていた。

関係者全員にDNA検査を依頼したのは吐血のDNAと一致する者がいないかどうか確かめるためだったのさ。

そして見事君のDNAと一致したわけだ。林佳奈」