「その通り。犯人はおそらく烈斗君からサプライズについて事前に知らされていた。そして血糊カプセルの中に二重に青酸カリ入りのカプセルを仕込んでおいた。
サプライズのことはその2人しか知らなかったから、犯人は誰からも怪しまれずに烈斗君を毒殺することができた。
カプセルはおそらく飲み込んでも胃酸で分解されるものを使用したから証拠は残らないわけだ」
「一体誰なんです、犯人は」
「まあそう焦るな。私はその道の専門家ではないが、私なりに犯人像をプロファイリングしてみた。
彼を殺すことによって例えば代わりに主役の座が手に入るとか、この舞台を台無しにすることで他の舞台監督が得をするとか、例の『最大の利益者仮説』を適用してみたが無理がある。
そうなると怨恨か痴情のもつれ等の感情的な動機か、猟奇的な動機が考えられる。私はこの事件はその両方であると考えた。
犯人は随分烈斗君に執着心がある人物だろう。何せ彼が主役の大事な舞台の途中で彼を毒殺するのだから。ただの痴情のもつれなら何も舞台の上という衆人環視の中で殺さなくてもいいはずだ。殺害するチャンスなら他にいくらでもあるし、その方が自分も怪しまれずに済む。
その時点で私は俳優の方々は容疑者から除外した。俳優が舞台にかける情熱や努力は本当に頭が下がるものだ。そんな人達が大事な舞台を死で穢すなど絶対にありえないことだからな。
こんなやり方で殺人を犯すような奴は舞台や演劇に何のリスペクトもない奴に決まっている。つまり、犯人はこの殺人舞台の監督にでもなったつもりで烈斗君に本物の死を演じさせ、彼の魂を永久に自分だけのハムレットとして所有することを望んだとんでもないサイコ野郎だ。
おそらく彼が死を迎えた瞬間に心の中でにやにやと薄気味悪い笑みを浮かべただろうな。そんな変態殺人鬼が、烈斗君が死を迎える最高の舞台を舞台袖から見るなどというもったいないことはしなかったはずだ。
つまり犯人はその時この惨劇を最も楽しめる場所、客席から観ていた人物だ」
「あっ!」