【前回の記事を読む】上司から『ハムレット』のチケットを2枚譲られ、気になる女性と観劇へ…だが実は、上司は4枚買っており、残り2枚で密かに2人を監視していた
ダウト2――シェイクスピアを疑え
「だからそれが何なんだ。結局、事件とは何の関係もないじゃないか」
伊藤は不服な様子だった。
「君のような凡人にはシェイクスピアがこの物語に仕掛けたせっかくの謎かけにも気づかないのだろうな」
「何だと」
「ちなみに私はシェイクスピアは歴史上最初のミステリー作家だと思っている」
「えっ、世界最初のミステリーはエドガー・アラン・ポーの『モルグ街の殺人』じゃないんですか?」
高井良が驚いて言った。
「史上最初のミステリーというのはいろんな議論があって、中には聖書の中にもミステリー性の高い物語があると言う人までいるので実は曖昧なのだ。だが、この『ハムレット』は明らかなミステリーだと言える」
「『ハムレット』のどこがミステリーなんですか?」
「まあ、ここで説明してもいいが、さすがに伊藤君が飽き飽きしているようなので君に宿題を出そう。この物語においてハムレットを殺した真犯人は誰か。後で訊くからそれまでに答えを考えておくように」
烈斗の遺体は鑑識官に運ばれていった。天蓋は尾崎と話し合い、舞台の関係者が待機している大楽屋の隣の楽屋を急遽取調室に見立てて、1人ずつその部屋に呼んで識鑑を行うことにした。