結局、烈斗の死体には僅かな外傷もなく、やはり服毒による中毒死が疑われた。
観客達は解放され、舞台の上では数名の鑑識官が捜査を行っていた。舞台の関係者は全員、地下の大楽屋の一つに集まってもらい、複数の警察官が監視していた。
女性がトイレに行く時さえ、トイレの中まで女性警察官がついていった。
舞台の上に残っていた天蓋の所に高井良、コロネ、詩が集まると、そこに一課の伊藤と柔和な相貌の40代くらいの刑事がやってきた。
「またお前達か。何勝手なことしてるんだ」
伊藤が高井良を睨みつけながら言った。
「勝手なこと? 僕達は殺人事件の目撃者だ」
「目撃者なら他にも大勢いる。これは一課の仕事だ。お前達には関係ない。早く帰れ」
「何だと? お前、辻の事件に直接関わってなかったから処分を免れたみたいだけど、天蓋さんや僕がいなかったら今頃どうなっていたと思ってるんだ」
伊藤の高慢な態度に高井良が憤慨した。
「まあまあまあまあ、みんな同じ警視庁の刑事なんだからさ。仲良くしようよ」
もう一人の一課の刑事が言った。
「そのとぼけた顔は尾崎君じゃないか」
天蓋が刑事に声をかけた。
「やめてくださいよ、天蓋さん。いつぞやは大変お世話になりました。天蓋さんのお陰でいくつも難事件を解決できたんで今日の僕があるわけです。昔から本当に天蓋さんには頭が上がりませんよ」
愛想笑いをしながら尾崎直哉は頭を掻いた。
「ちょっと待ってください、班長。まさか、こいつらを捜査に加えるんですか?」
伊藤が慌てて尾崎に詰め寄った。
「しょうがないだろ。事件の目撃者なんだし。それに昔から天蓋さんを怒らせると大変なことになるんだよ」
「それでは捜査を始めよう」
天蓋が宣言した。
「ちょっと待ってください。その前に、何で天蓋さんと詩さんがこの劇場にいたんですか? チケットは2枚じゃなかったんですか?」
高井良が訊ねた。
次回更新は10月1日(木)、21時の予定です。
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