【前回の記事を読む】『ハムレット』終演後、カーテンコールで再び幕が上がっても、主演俳優は舞台に倒れたままだった…大量の血を吐き、白目をむいていて…

ダウト2――シェイクスピアを疑え

パニック状態の客席の中で高井良とコロネは立ち上がって狼狽するばかりだったが、その横の通路を1人の男が通り過ぎ、舞台の方に悠然と向かって行った。

高井良はそのもじゃもじゃ頭に明らかに見覚えがあった。

「天蓋さん?」

天蓋は舞台下に辿り着くと警察手帳を見せながら拡声器で客席に向かって指示した。

「はい、静粛に。私は警視庁の者だ。皆さんは全員容疑者だ。許可があるまでおとなしく席に着いて待機するように。許可なく退席することを固く禁じる」

劇場の後方を見ると詩が出口前に立っていて天蓋に向けて親指を立てた。

「詩さんも! 何で2人がここに?」

天蓋は舞台に上がり込み、理亜を押し退けると烈斗の呼吸を確認し、頸動脈を触知し、瞼を開いてペンライトで瞳孔の対光反射を確認したりしていたが、立ち上がるとこう宣告した。

「死んでいる。おそらく青酸カリによる毒殺だろう」

理亜が烈斗の体に覆い被さり、泣き崩れた。堀井は疲れ果てた顔で心臓マッサージの手を止めた。

「2人とも遺体から離れるんだ」

天蓋が指示した。

「烈斗! どうしてこんなことに!」

よろめきながら遺体に近づいてきたガートルード役の加藤瑠璃がその場に崩れ落ちた。クローディアス役の黒田飛鳥が彼女の体を支えた。