「それじゃあ、最初から監視カメラと盗聴器で辻さんが犯人と知っていたんですね」

教3の部屋で高井良が椅子に座ってコーヒーを飲んでいる天蓋に言った。

「最初から監視カメラの情報を知っていたわけではない。何しろデータが膨大だからね。しかし自分の推理を立証するのには役立つ。本庁内の人間が犯人の場合はね」

「そんなに大量の監視カメラを仕込んで一体何をするつもりなんですか?」

「私は相手が警察官だからと言って簡単に信用するような人間ではない。辻君のように何かしら不正をしている人間が潜んでいる可能性がある。それを暴くためには常に監視を怠らないことが重要だ」

「だからと言って無許可で監視カメラを仕掛けるなんて。こんなこと川崎部長に知られて大丈夫なんですか?」

「大丈夫だ。どうせ私はもう警察を辞めないといけないからな」

「えっ、何でですか?」

「もう忘れたのか。君の推理が間違っていたら私は警察官を辞職すると約束したのだ。つまり君のせいで私は警察をクビになるということだ」

「ええっ、ちょっと待ってくださいよ。辻さんが捕まったんだからもうそれはいいじゃないですか」

「いや、武士に二言はない」

「いや、武士じゃないでしょ。分かりました。どうぞ警察を辞めてください。ただし、僕が一人前の刑事になるまで指導してからにしてもらっていいですか」

「それでは10年以上かかる」

「辞めるとはおっしゃいましたが、いつまでに辞めるとはおっしゃらなかったですよね」

「なるほど。君の言うことにも一理ある。よかろう。我々刑事教養第3係の使命は日常の繁務に追われてすっかり無教養になってしまった刑事達に、この宇宙の森羅万象における知識を深め、その真理を探究することこそが、目の前の事件解決の近道であることを知らしめることだ。君をもう少しましな刑事にするまで私の辞職は保留することにしよう」

「ありがとうございます」

高井良は深々とお辞儀をした。

「それではこれから天蓋さんとお呼びしてよいですか?」

「は? 駄目だ」

「えっ、どうしてですか。詩さんもコロネちゃんも天蓋さんって呼んでるじゃないですか」

「私は別に下の名前で呼ぶことを彼女らに許可しているわけではない。彼女達が勝手にそう呼んでいるだけだ」

「じゃあ僕も勝手に呼ばせてもらいます」

「勝手にしろ」

「ちょっと、今、私のことも下の名前で呼ばなかった?」

詩が割り込んできた。

「ええ、光信さんより詩さんの方がしっくりくるんで」

「後輩に下の名前で呼ばれたくないんですけど。これってセクハラじゃない?」

「海外では職場の上司であってもファーストネームで呼ぶんですからセクハラではありません。むしろ親愛の情ととってください」

「なんか納得いかないな」

「それでは改めてご指導のほどよろしくお願いします」

高井良は2人に頭を下げた。

「ダウト1――銃殺を疑え」終わり。「ダウト2――シェイクスピアを疑え」に続く。

次回更新は9月27日(日)、21時の予定です。

 

👉『ダウトマン』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】隣の部屋の男から誘われた。つい昨夜、別の女性と愛し合う“あの声”が聞こえたのに…なぜか断れず、誘いに乗ってしまった。

【注目記事】目が覚めると、彼氏がベッドに縛られていた…傍で女が笑ってる。彼の悲痛な声もお構いなしに、女は彼の服を脱がし体にキスし始めた

 

ゴールドライフオンライン(GLO)は、表現者を応援するウェブメディアです。
生身の人間が紡ぐリアルな言葉だからこそ、読者の心を揺さぶる力があると確信しています。
あなたも、"表現者"になってみませんか?
ゴールドライフオンライン(GLO)編集部:glo_henshu@gentosha.co.jp