「その老人ってまさか……」

高井良があることを思い出した。

「そう。君達が公園にいた時に老人ホームの職員が捜していた後藤悟さんだ。彼は認知症があり、老人ホームを抜け出して公園の周囲を徘徊していたところを辻君の車に轢かれてしまったのだ」

「じゃあ、3人の若者が聞いたドーンという音は……」

「もちろん、辻君の車が後藤さんに衝突したときの音だ。あそこまで聞こえたとしたら、相当無茶なスピードを出していたのだろう」

「でも、その事故と公園の事件は何の関係があるんです?」

「辻君は随分焦ったろうね。交通死亡事故を起こしたとなれば捜査一課どころか、警察を辞めないといけなくなる。

彼はそれだけは絶対に避けたかった。そのためには後藤さんの遺体をどうにか処分しないといけない。それで彼は山本と恐ろしい取引をすることにした」

「取引?」

「山本に公園で銃で撃たれて殺されたことにしてもらい、その代わり辻君と取引のある闇ルートを通じて山本をフィリピンに密航させるという取引だ。

山本は辻君の弱みを握ってしまったわけだが、それはかえって彼の立場を悪くした。告発しようとすればすぐに殺されかねないからね。

それより彼はフィリピンへの逃亡を望み、取引に応じた。彼らは後藤さんの遺体を公園の例の現場に運んだ後、まず山本を現場に横たわらせ写真を撮った。

そして午前3時頃、後藤さんにポケットに免許証と覚醒剤が入った山本の服を着せ、木下が後藤さんの遺体を背後から抱えて無理矢理モミジの木の近くに立たせ、辻君が後藤さんの右側頭部を拳銃で撃った。

この時公園にいた3人の若者がパンという銃声を聞いて現場に近づいてきたので、辻君らは一度身を隠し、あたかも今現場に駆け付けたかのように装い、若者達を追い払った。

そして、辻君は木の幹に刺さっていた弾丸を回収した。後藤さんのジャージを着た山本にはすぐに自宅に帰って、フィリピン行きの船が出る港へ行くよう指示した。

もちろん、妻の麻衣にも連絡してこの陰謀を了承させた」

「そ、それじゃ、公園で撃たれたのは山本ではなくて、後藤さんの死体だったと言うんですか」

「まさしく。だから言っているのだよ。Y公園で殺人事件など起きてはいないと。起きたのはひき逃げと死体損壊だ」

次回更新は9月25日(金)、21時の予定です。

 

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