【前回の記事を読む】「傷害罪容疑で逮捕する」店に現れた刑事を突き飛ばし、元暴力団員は逃走…直後、暗い路地で銃声。追っていた刑事は「威嚇射撃した」と話すが…
ダウト1――銃殺を疑え
「え、嘘ってどんな?」
「分かりませんけど」
「高井良君、まさか辻さんが山本を殺したって言うんじゃないでしょうね」
詩が顔を蒼褪めさせて言った。
「僕は嘘をついているとしか言ってませんよ。光信さんはそう思ってるんですか?
「ま、まさか。そんなことあるはずないじゃない。ははははは……」
「そうですよね。ははははは……」
2人は恐怖をごまかすかのようにあえて笑い合った。だがすぐに高井良の顔が曇った。
「でも、一体弾丸はどこに行ったんでしょう?」
詩も顔を強張らせたが、いきなり高井良を突き飛ばした。
「もう探偵ごっこはこれでおしまい。そもそもこんなこと私達が考えることじゃないんだから。ほら、帰るよ」
詩は高井良をおいて駅へと足を速めた。
10月17日の朝、高井良が教3の部屋に入ると、詩は既にコーヒーを啜っていた。
「おはようございます。係長はまだ来てないんですか?」
「ああ、そうね」
「僕が着任してからもう1週間以上経つんですよ。もうそろそろ連絡してくださいよ」
「嫌よ。そんなことしたって私が怒られるんだから。あ、そうだ。弾丸見つかったってよ」
「えっ! どこから?」
「今朝の遺留捜査で現場の林と広場を挟んで対面にある林の木の根元に落ちているのを見つけたみたい。コロネちゃんが証拠品として捜査資料管理室に保管したって言ってた」
「えっ、じゃあ僕らが見たあの弾痕は何だったんですか?」
「さあ、キツツキが開けた穴とか。
あっ、知ってる? キツツキは毎秒20から25回木をつつくんだけど、もしこれが人間だったらすぐに脳震盪を起こすレベルなんだって。従来はキツツキには脳を守る緩衝材があるから大丈夫なんだって言われてたんだけど、実は緩衝材はなくてただ脳が小さすぎるから脳震盪を起こさないらしいよ。何も考えない人の方が何が起きても精神的ダメージが少ないのとおんなじね」
「あれはキツツキが開けた穴なんかじゃありません! サイズ的にも絶対に弾痕でした」
「でも実際弾丸は別の所から見つかってるわけだから」
「ちょっと行ってきます」
そう言うと高井良は部屋を出て行った。
「おい、ちょっと! もういい加減にしてよね」
残された詩は1人愚痴った。