その時暗闇の向こうでパンという銃声が響いた。
高井良と詩は驚きのあまり身をすくめたが、音のした方へ駆けつけると暗い路地に辻と木下がこちらに背を向けて突っ立っていた。
「何があったんですか?」
「あいつ、追い詰められたらナイフを取り出してこっちに向かってきやがった。辻さんが威嚇射撃したから助かったが、その間に逃げちまった」
木下が説明した。
「すぐに指名手配しろ」
辻が木下に指示した。
「分かりました」
辻が高井良の方を振り返った。
「高井良と言ったな。何でお前があそこにいた」
「あ、あの、高井良君の歓迎会の2次会であのバーで2人で飲んでたんです」
詩が愛想笑いしながらごまかそうとした。
「随分余計な詮索をしているようだが、これ以上俺達の捜査の邪魔をするようならただではおかない。一課に来るどころか、地方に飛ばされることになるから覚悟しとけ」
「藤井は何をしたんですか?」
高井良が訊ねた。
「さっき、居酒屋で客と喧嘩して相手を殴って怪我させた。今のところは傷害罪容疑だが、俺達は藤井が山本を殺したと睨んでいる」
「藤井が?」
「藤井は暴力団を抜けてからも山本とつるんでいたが、山本に貸した金が戻ってこないとぼやいていたのを聞いていた奴がいる。おそらくは借金のトラブルが原因で殺意を抱いたんだろう。元暴力団なら銃を手に入れるのはそう難しくないからな」
「でも、さっき藤井は貸した金はすぐに戻ってきたと……」
「あ?」
詩が苦笑いしながら慌てて弁解した。
「いえ、何でもありません。すぐ近くに座ってたら彼の独り言が聞こえてきただけで……」
「とにかくもうこれ以上邪魔はするな。今度お前達の顔を見たらただでは済まさない」
そう言って辻は立ち去った。