10月16日の夕方、2人は山本の住所を訪れた。それは古いアパートの2階の部屋だった。高井良が何度もチャイムを押したが全く反応はなかった。

「留守でしょうか」

「しょうがないね。帰ろう」

諦めて戻ろうとした時、1人の女性が階段を上がってきて、2人を見つけると驚いたように立ち止まった。髪は茶色に染めたソバージュで、左手にはスーパーのレジ袋を抱えており、中から長ネギが顔を出している。右手には6缶パックの缶ビールを提げていた。

「誰?」

強張った表情で彼女が訊ねた。詩が警察手帳を見せた。

「すみません、私達警視庁の者です。山本麻衣さんですね。少しお話を聞かせてもらってもいいですか」

「話なら前にもしましたけど」

「そうですよね」

詩が引き下がろうとすると高井良が横から口を挟んだ。

「ご主人が亡くなられたばかりでお気を落とされているところ申し訳ないんですが、山本学さんの死には不審な点があるんです。最近ご主人のことで何か気になるところはなかったですか?」

「いえ、特に何も。夫があんな死に方をしてまだ亡骸も帰ってきていないんです。帰ってもらえませんか」

そう言うと麻衣は部屋の鍵を開け、中に入ろうとした。それを高井良が遮った。

「あ、ちょっとすみません。それなら彼と親しくしていた人とかご存じないですか?」

麻衣は無視して部屋に入ろうとしたが、高井良がしつこく迫るため渋々口を開いた。

「藤井という若い男とよく飲み歩いていました。それ以上は知りません」

そう言うと麻衣は部屋に入り鍵を閉めてしまった。