【前回の記事を読む】ネカフェの共有スペースで、隣に老人が来て「仕事、紹介してやるよ」と…その理由に息を呑んだ。渡された名刺を握り締め、涙が…

3.

翌日、渉は老人——田中さんといった——に連れられて、居酒屋「武蔵」を訪ねた。

場所は都内の住宅街の一角だった。大通りから少し入った路地にある、年季の入った木造の建物だった。暖簾が出ていて、手書きの品書きが貼ってあった。こぢんまりとしているが、どこか温かい雰囲気があった。

「武蔵」の店主は、60代くらいの男性で、武田さんといった。田中さんよりはだいぶ若く、がっしりとした体格をしていた。渉を見るなり「若いな」と言った。

「田中さんから聞いてる。住み込みで働きたいんだって?」

「はい。どんな仕事でもします」

武田さんは渉をじっくりと見た。どんな人間か確かめるような目だったが、嫌な感じではなかった。

「料理はできるか」

「簡単なものなら」

「酒は飲むか」

「飲めます」

「体は丈夫か」

渉は少し間を置いた。正直に言うべきかどうか迷った。