まずシャワーを勧めた。

浴室に入り、お互いに服を脱いだ。白い灯りの中で、浩子が少し恥ずかしそうに体を縮めた。渉はそれを気にしないよう振る舞いながら、シャワーのお湯を調整した。

「少し熱いかもしれません。温度を低くしましょうか」

「いいです……このくらいで」

ボディソープを手によく泡立ててから、浩子の背中にゆっくりと触れた。肩甲骨のくぼみに沿って手を滑らせると、浩子の肩がわずかに下がった。体の力が少しずつ抜けていく。

「壁に手をついてもらえますか」

浩子が言われた通りにした。渉は背後に立ち、専用のソープをたっぷりと泡立てて、腰から太ももへと丁寧に手を移した。内側に差し掛かったとき、浩子の息がひとつ詰まった。

「……っ」

渉は焦らず、ゆっくりとした動きで続けた。背中に戻り、ソフトに触れながら、今度は胸へと手を移した。泡に包まれた手が形をなぞるように動くたびに、浩子の体が小さく震えた。

「力を抜いていいですよ」

渉の声は静かで低かった。施術中はいつもそうだった。感情を抑えて、ただ目の前の人に集中する。それだけが、渉にできることだった。

シャワーを終えて、湯船に浸かった。渉は浩子の後ろから湯船に入り、そっと抱きしめた。

湯の温度が体に広がっていく中、浩子がぽつりと言った。

「夫と最後に2人でお風呂に入ったの、いつだろう」

渉は答えなかった。湯船の中で、浩子の体が、やっと渉に体重を預けてきた。

「……子供が生まれてから、もう何年もなくて。私のこと、女として見てないんだと思う」

「そんなことないと思いますよ」

「ワタルさんはそう言ってくれるけど」

「……俺には、正直わかりません。でも、こうして触れていると、浩子さんはちゃんと女性ですよ」

浩子は黙っていた。やがて、小さな声で「ありがとう」と言った。