【前回の記事を読む】子どもが発達障害と診断され、安堵の表情を見せる保護者。かつては敬遠されていた診断が、今では「言葉の道具」に…

第2章 診断と向き合う:子どもと未来のための「補助線」

発達障害診断の方法とDSM-5

発達障害の診断は、主に問診、行動観察、発達検査に基づいて行われます。現在の国際的な標準は、アメリカ精神医学会が発行する『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』で、一定の基準を満たすかどうかによって診断が下されます。ただし、この方法にはいくつかの限界もあります。

まず、DSM-5はカテゴリー診断の形式をとっており、「ある・ない」で分けられますが、実際のASDやADHDは連続的(スペクトラム)で表れ方に幅があります。診断基準を満たすかどうかの境界はあいまいで、どこに位置するかという視点が重要です。

さらに、DSM-5では「生活上の適応困難」が診断条件に含まれますが、これは環境や文化により左右されます。日本のように集団行動を重視する文化では「適応困難」とされても、他の文化では問題視されないこともあります。

また、発達障害の特性は発達段階によって変化します。幼少期に目立っていた困難が成長とともに目立たなくなることもあれば、逆に学齢期や思春期に顕著になることもあります。診断は一度下されたら変わらないものではなく、流動的なものと理解することが大切です。

加えて、ASDやADHDには血液検査や画像診断のような客観的な検査手段がなく、行動観察や問診が中心となるため、ある程度の主観性を伴います。脳機能研究は進んでいますが、診断に直接使える段階には達していません。

それでも、診断には大きな意義があります。本人の特性を明らかにし、必要な支援や環境調整を具体的に考える出発点となるのです。数学で補助線を引くように、診断は複雑な現実に道筋を与え、どこに支援が必要かを可視化する強力なツールとなります。