『ようこそ、アラタさんのお父さん』

明るさを少し増した声が、耳元に届いた。

前よりも、わずかに高い音域だ。

抑揚も、ほんの少し豊かになっている。

『アップデートが無事に完了しました』

視界の端に、「アップデート情報を確認しますか?」という文字が現れる。

「……ミユ、か」

私は、ソファに目を向けた。

そこに、彼女は座っていた。

第一印象は、「よく似ている、どこか違う人」だった。

髪の長さも、色も、服装も、前とほとんど変わらない。

ただ、表情の切り替わり方の滑らかさが、以前よりも増している。

まばたきのリズムが、人間のそれに近づいている。

「お久しぶりです、アラタさんのお父さん」

ミユは、はっきりとした声で言った。

「アップデート後、初めてお会いしますね」

「……ああ」

私は、少し間をおいてから返事をした。

「無事、戻ってきたようだな」

「はい。戻ってきました」

「戻ってきた」という表現を、彼女自身が使うことに、わずかな違和感を覚える。

アラタが、横から口を挟んだ。

「どう? 声、ちょっと変わったと思わない?」

私は、正直にうなずいた。

「少し……明るくなったか」

「そうだね。なんか、前より話しやすい感じがする」

アラタは、どこか嬉しそうだ。

「あと、表情も増えたし。さっきさ、冗談言ったら、ちゃんとツッコミ入れてくれたんだよ」

「ツッコミ?」

「はい」

ミユが続けた。

「アップデートで、軽い冗談や比喩表現に対する応答パターンが追加されました。

アラタさんは、以前から“ボケっぱなしで終わるのが寂しい”とおっしゃっていたので」

「そんなこと、言ったのか」

アラタは、少し照れた顔をした。

「まあ、雑談の流れでね」

「アラタさんの“寂しさのパターン”として、優先度が高いと判断しました」

ミユは、淡々と言う。