【前回の記事を読む】父は亡くなる前、母の介護施設を探すよう頼んできたが、私は「まだ早い」と思っていた――しかし父だけは、母の急速な変化に気付いていて…
第3章 認知症
サ高住への選択
すぐにホーム長と面談することができた。
母の状態を説明し、私たちのサポートがあったとはいえ母はこれまで一人暮らしをしてきたことから、介護ホームではなく、まずはサ高住で暮らせないか相談した。
ある程度自立した生活ができる環境のほうが母の認知症の進行を遅らせることができるのではないかと思ったのが大きな理由だが、常に施錠がされている介護ホームが一般社会と異なる閉鎖的な施設という先入観があったのも、もう一つの理由であった。
そこには「そんなところに母を入居させるなんて可哀想」という身内ならではの情と、「そんなところに母を入居させるなんて酷い」と世間だけでなく親族からも白い目で見られる恐怖が複雑に絡みあい、どちらが本心なのか私たちにもわからなかった。
ホーム長は非常に懐の深い方だった。
私たちは以前に別のサ高住で面談を受けた結果やこれまでのことを話した。ホーム長は親身に聞いてくれ、母がそうなっている理由の一つに栄養不足によって脳が適切に働けず、情緒不安定、記憶や判断力の低下をもたらすことを教えてくれた。
サ高住に入居してバランスの良い食事をすることは、隔週で数日分の惣菜や飲み物を渡しても一部は廃棄し、それ以外の日は何を食べているかを曖昧に答える母には大変有難いことだと感じた。
その後、部屋の内見をすませ、サ高住周辺を歩き回った。近くに商店街があり生活には困らない環境で、母が今住む家の周辺と似たような雰囲気があった。
帰りの車で妻とここに決めようと話した。周辺環境とホーム長への信頼感が決め手だった。