【前回の記事を読む】「データが消えたら、仕事行けなくなるかも」と話す息子。「AIになんか頼るからだ」と言うつもりだったが、亡き妻との最期の会話を思い出し……

息子にAIを彼女として紹介されたらどうしよ

第4章 落ちる夜

「……そういうの、Bタイプっていうんじゃないの」

アラタが、ぼそりと言う。

「ん?」

「落ち着いてて、共感的で、批判を抑制するやつ」

私は、苦笑した。

「俺は、批判を抑制できてるかどうか、怪しいがな」

「まあ、さっきは“バカだな”って即答されたけど」

「そこは抑制できなかった」

二人でまた、少し笑う。

気づけば、時計の針は三時を回っていた。

ステータスページの表示は、相変わらず「原因の特定と復旧作業を行っております」のままだ。

「今日は、もう繋がらないだろうな」

アラタが、メガネのフレームに指を添えた。

「そうだな」

「ここで、ちょっと寝てもいい?」

「構わん」

私は、客用の布団を持ってくるか迷い、結局押し入れの扉に手をかけたまま立ち止まった。

ソファでうたた寝する息子の姿が、子どもの頃の昼寝と重なる。

「メガネ、外して寝ろ」

背中に向かってそう言うと、アラタは少しだけ躊躇ってから、フレームを外した。

テーブルの上に、彼のメガネと、私の家のフレームが並ぶ。

久しぶりに見る、素顔の目元だった。

まぶたの重さや、睫毛の長さが、妙に生々しい。

「お父さんも、ちょっと寝たほうがいいよ」

「そうだな」

私は照明を少し落とし、キッチンの窓から差し込む街灯の薄い光だけにした。

ソファの背もたれに頭を預けると、すぐにまぶたが重くなる。

眠りに落ちる直前、テーブルの上の二つのフレームが、ぼんやりと視界に浮かんだ。

一つは、クラウドの向こうに繋がる道具。

もう一つは、ただの樹脂と金属に過ぎない。

どちらも、今はただ静かに、そこにあるだけだった。