【前回の記事を読む】天武天皇が発案した『古事記』…系譜の誤りを正すという大義の裏で、“ある神話”がひそかに仕込まれた…その真の目的は……

はじめに

偽装の『古事記』とからくりの『日本書紀』

*天皇統治の正当性を主張する『古事記』

諸家の所蔵する帝紀及び本辞が、諸家それぞれの都合によって書き改められ、「正實に違(たが)い、多く虚偽を加」えてきたことも間違いないだろう。

だがここで、天皇家の都合により編纂された『古事記』もまた同様に「正實に違い、多く虚偽を加」えている可能性があるのではないか。

しかも「偽(いつは)りを削り實(まこと)を定めて、後葉(のちのよ)に流(つた)へむと欲(おも)ふ。」と言って、あたかも自身が最も正しいかの如く装っているのである。

これらの観点からすれば、『古事記』が偽装の書であることに疑いの余地はないのである。

*「古事記神話」で枷をはめられた『日本書紀』

そして『日本書紀』である。

『日本書紀』も『古事記』と同様に発案は天武天皇だと言われる。

『古事記』が漢文体を基調としながらも、漢字の音訓を利用した日本語を併用しているのに対して、『日本書紀』はすべて漢文体である。そして干支を用いて年次を明確にしながら、その時々の出来事を詳細に記録している。

『古事記』が国内向けの天皇家の物語だとするならば、『日本書紀』は中国の歴代王朝を意識した我が国の歴史書としての体裁を強くもっているわけである。

だが残念なことにこの歴史書としての『日本書紀』には、少なからぬ疑惑が付き纏っている。