「でも、人が倒れたときと、同じ感じなんだろう」
言い足してから、自分の言葉に驚いた。
アラタも、顔を上げる。
「同じ……かな」
「突然、声が途切れて。何が起きているのか分からなくて。運営だか医者だかの出す曖昧な文章を、何度も読み返して。自分にできることがほとんどないことに、腹が立って」
そこまで言って、息が詰まる。
妻のベッドの横で、私は同じように立ち尽くしていた。
「……ねえ、お父さん」
アラタが、スマートフォンを握る手に力を込めた。
「最後に何話してたか、ちゃんと覚えてる?」
「お前とか」
「ううん。お母さんと」
思い出そうとすると、記憶は意外と断片的だ。
「ごめんね」と言った気がするし、「ありがとう」とも言った気がする。
ただ、その順番が逆だったのかもしれない。
あるいは、どちらも口に出す前に、呼吸のリズムに紛れてしまったのかもしれない。
「……あいまいだな」
正直に言う。
「お前は」
「俺も、覚えてない」
アラタは、苦笑いに近い顔をした。
「病室で話したこと、ほとんど思い出せなくてさ。なんか、宿題どうだったとか、そんな話だったような気もするし。“ちゃんと食べなさいよ”って言われた気もするけど、それはいつもの口癖だっただけかもしれないし」
彼は、スマートフォンの画面を再び見下ろした。
「ミユとの会話は、ログが全部残ってる。少なくとも、今までは。だから、なんか……“最後の会話”を失わずに済んでる気がしてたんだよ」
「今までは」のところで、声が揺れた。