第九話 鉄屑拾い。「鉄・鉄管・鉄瓶・鉄橋!」

ケンが小学4・5年生の時、急に「鉄屑拾い」が巷(ちまた)で流行った。

朝鮮動乱によって金属の需要が高まり、値段が高くなったことによる。そこで猫も杓子も……つまり大人から子供まで鉄や銅に関心が高まり、雨後の竹の子のように各地に「屑鉄屋」、つまり鉄や銅を買いとる「仲介屋」が生まれた。閑(ひま)な金持ちはこぞって、この商売に手を出した。

彼らは「鉄屑拾い」から持ち込まれた金物を買い集めては、大元の「廃品回収業者・屑鉄商」に売るのである。いながらにして儲かる「濡れ手で粟の旦那さま稼業」であった。金属はおおよそ次のような値段であった。

銅(あかがね)百匁(375):60円。アルミ百匁:60円。真鍮や唐(から)かね百匁:130円。鉄1貫匁(3.75kg):60円。鋳物(いもの)(=鋳鉄)百匁:60円などである。

アルミ(アルマイト)が馬鹿に高かった。軽くて強く、錆びないという新材料で、貴重品であった。

ケンも友達に誘われて鉄屑拾いを始めた。

「鉄屑拾い」という言葉になんとなく抵抗があって馴染めなかったが、なにしろお金(収入)になるのだ。工員の日給が200円ぐらい、米は一升100円といった時代での鉄屑拾いはいい稼ぎであった。時には工員の日給以上を稼ぐ子もいた。

ケンはとっておきの場所を発見した。大川の堰堤(えんてい)下の水が落ちる凹地である。そこに銅線などの金属が溜まっていることに気付いたのである。金属は比重が大きいので、凹地に一旦落ちると抜け出すことができずに溜まってしまうからである。難点は、その岸辺を友達が通ることであった。

よって、彼は学校が終わるや否や脱兎のごとく学校を出て、みんなが帰校する前にさっさと拾いあげることにしていた。ところがある日、彼は自分の運命を変えるほどのショッキングな出来事に出くわした。

その日もケンは早めに学校から帰り、すぐさま友達と川に向かった。「今日こそは工場の職人よりも稼ぐぞ!」と意気込んでいた。彼はどうしても野球のグローブが欲しかったのである。現場に着くや、さっそく懸命に赤金(銅)を拾い集めた。ほかの金属には目もくれなかった。

試し読み連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。

 

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