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第2章

何が待ち受けているか

一九八七年の冬だっただろうか、その日は手がかじかむほど東京も寒い日でした。

槐は、新人ワーカーのイチイさんと、日本画家である高齢の女性宅を訪問しました。

垣根が続き、格子戸をくぐり、和風の平屋住宅は和装の女性を多く描く画家の住処でした。

ヘルパーさんを派遣してほしいと、昨日相談に来られた七〇代後半の弟さんが、玄関に出てこられ「姉の部屋はこちらです」と言い残し自室に入っていきました。

広い整然とした和室に、画家のお姉さんは布団の上に座っていました。

小さな飯台が布団の上に置かれ、食パンとジャムに紅茶の朝食で物静かに食べていました。お姉さんは八〇代半ばでしたが、背筋を伸ばし凛としていました。彼は正座してお姉さんに「担当ワーカーです。今日はよろしくお願いします。困っていることは何でしょうか」と訊ねました。「トイレに行けなくなった」と言われました。

お姉さんの様子から、暖房がない部屋にこのままにしては風邪をひく、槐たちは緊張が走りました。お湯を沸かし、温めたタオルで体を拭き、着替えを手伝いました。

新しい布団に替え横になってもらいました。彼はお姉さんに「ヘルパーさんに早速訪問してもらいましょう」と語りかけると「よろしくお願いします」と少し安心したようで表情が緩やかになりました。

この場は何とか二人で乗り切りました。職場に帰る道すがら「これで良かったと思う?」と彼の気持ちを正しました。

このようなことは、めったに出会わないが、ワーカーがやれる範囲かどうか、少し無理した槐たちでした。彼は、どう答えていいか迷って「やれるとこまで、なかなかその場になると難しいと思う」と答えてくれました。