消えたお金
母の血縁認知が低下してきたのとほぼ同時期に、母の生活費が不足していることが発覚した。
気づいたきっかけは、母がいつの間にか新聞を取ることをやめていたので、新聞を再度取るように勧めた時だ。新聞は、コミュニティに加わらない母が、社会との繋がりを認識できる唯一の手段と私たちは考えていたので、妻がそれとなく言ってみた。
「新聞取るのやめちゃったの?」
「うん」
「前は虫眼鏡を使って頑張って読んでたじゃん。文字が見えなくなっちゃった?」
「そういうわけじゃないけど」
「だったらまた読み始めたほうがいいよ」
毎晩の電話で何度も新聞を取ることを勧める妻に、母は突然怒鳴りだした。
「そんなお金はないわよ!」
母の突然の怒りとその内容に戸惑う妻。
「……え? お金がないの? そんなはずないよ、毎月結構な額を渡してるじゃん。まだ渡してから二週間しか経ってないよ?」
「ないものはないんだから!」
お金が無くなった理由を聞きたい妻とお金がない現状しか伝えない母の口論は平行線のままだ。
「ちょっと待ってよ、何に使ったらそんなになくなるの? お母さんの生活スタイルなら充分余るはずだよ!」
「だから、ないものはないって言ってるじゃない!」
「だから、何に使ったの?」
「もういいじゃない!」
またしても通話終了後の通知音が静かな部屋に広がった。
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十分な生活費を渡している母から「お金がない」と電話が…通帳残高はわずか数百円、さらに亡き父が「もしもの時に」と遺したお金まで消えていて…
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