翌日の夜、妻は毎度お馴染みのフレーズで定例の電話をする。

「今日はだいぶ冷えてきたけど、大丈夫?」

「寒さには強いから平気だよ」

気丈に振る舞う母の返事の後、昨日持っていった食材を食べたか尋ねる。

「ご飯はちゃんと食べてる?」

「うん、外に行ったりして食べてるよ」

「昨日持っていった惣菜は? 角煮は早めに食べてほしいんだけど、食べた?」

「あー、硬かったから捨てたわ。硬いお肉って消化が悪いから胃に負担がかかるでしょ」

母の口から平然と思いがけない言葉が飛び出し、妻は硬直し、次の言葉がなかなか出てこない。母を怒らせない言葉を慎重に選ぶ。

「……そっか。でもタンパク質は老化防止になるっていうから、ちゃんと食べないと」

「そうね、お肉は食べないとね」

電話の後、妻は悲痛な表情を浮かべていた。

妻は、一人暮らしを選び頑張る母を思い、可能な限り食べやすそうで健康のためにも質がそこそこ良い惣菜などを選んで買っている。

買い物に付き合う私が、羨ましく思うほど美味しそうなものばかりだ。普通の母親は、娘が母のためにせっかく買ってきた惣菜を硬いという理由で捨てたりするだろうか。

百歩譲ったとしても、わざわざ買ってきてくれた本人にそれを伝えるとは思えない。

やはり母の判断力が低下したと認めざるを得ないのだろうか。先行きが不安で一杯になった。

 

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