そして今、波瑠さんが同じ問いを僕に投げかけてきた。

「……私は、東都女学院に行かなければいけないのでしょうか?」

偏差値75を超える、誰もが憧れる名門。彼女の学力なら合格は確実だ。けれど、彼女が求めているのは励ましではない。

「母は、医者になれば人生が幸せになると信じています。けれど……お友達は、美容師や保育士になりたいと笑って話すんです。その姿が、あまりに眩しくて」

波瑠さんの瞳に影が宿る。

「私は医者以外の道を知りませんでした。それを母に言えば、きっと怒られる……。私はどうしたらいいんでしょうか?」

僕は答えに窮した。僕自身、なりたいものを探さないために、あるいは妹を助けるという理由を盾にするために、ただ勉強し続けてきただけなのだから。

「人生で一番嬉しかったことや、悔しかったことから逆算して、自分のしたいことを探してみたら?」

かつて面接対策で教わった借り物の言葉しか出せない自分を、僕は非力だと呪った。帰り道、初夏の蒸し暑さの中で、僕はぽつりと呟いた。

「……ごめんなさい、波瑠さん」

次回更新は8月18日(火)、20時の予定です。

 

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